クワガタの累代飼育(インブリード)による障害は起きるのか?近親交配の弊害は存在する?

クワガタをインブリードすると奇形が多発する?

クワガタムシやカブトムシの飼育は簡単です。小学生でも親の助けなしに卵を産ませ、
幼虫を育てて成虫を羽化させることができます。さらに、取れた子供同士を交配させ、
再び卵から育てれば、エンドレスに飼育を楽しむことができます。

つまり生まれてきた兄弟同士を掛け合わせ、繁殖させ続けるという方法ですね。このやり方を「累代飼育」と呼びます。
累代飼育すれば、一組のオスとメスから、何百頭という子孫を残せるため、手軽に数を増やすことができます。

また、兄弟同士で交配させると、親の大きさや形を色濃く受け継いだ子供が生まれてきやすくなります。
ですから、大きな親同士、形のよい親同士を掛け合わせると、親の代よりもさらに洗練された形の個体が生まれてきやすくなるのです。

しかし、この累代飼育をくり返すと、様々な障害がでてくると言われています。卵を産まなくなったり、羽化不全が多発して奇形がたくさん生まれてくるなど、あらゆる事例が報告されています。累代を行い続けると、最終的にまったく生殖能力がないメスばかりになり、最終的に血が途絶えるケースも存在します。

そもそも、兄弟同士を延々と交配させ続けるのは、人間で例えると近親相姦以外の何物でもありません。そのため、奇形が生まれたり、生殖能力が衰えたりすることがあるとされていて、危険視する声も上がっています。

ですが、昆虫と人間では全く違う生き物であるため、近親交配をさせても大丈夫だという意見もあります。

果たして、どちらの説が本当なのでしょうか?

累代障害とされる事例

インブリードを重ねたことが原因で、累代障害を起こしてしまったとされる事例を紹介します。
まず、累代障害が起きたのではないかと、一番多く報告されるのが、卵を産まなくなるケースです。
これは、兄弟同士でずっと繁殖させていくと、次第に産卵する数が減り、最終的にまったく生殖能力がなくなるというものです。
特に、累代生涯を起こしやすいと言われているのが、ヘラクレスオオカブトです。
ヘラクレスオオカブトのほとんどの亜種は、野生の個体を輸入することができないため、血がかなり濃くなっています
そもそも現在流通している個体のほとんどが、元をたどっていくと同じ親虫に行きつくことが多いそうです。

つまり、人間で例えると、親戚同士で延々と交配しているのと同じです。
ヘラクレスを兄弟同士で掛け合わせ、累代飼育すると、かなりの確率で無精卵しか産まないメスが出たり、羽化不全で死亡するオスが多発するそうです。

他にも、パプアキンイロクワガタやニジイロクワガタなどの色虫も、累代障害を起こしやすいとされています。これらの虫は、
何代もインブリードすると、卵を産まなくなり、血が途絶えてしまうそうです。特にブルーやパープルなど、珍しいカラーになりやすい
血統は途絶えやすいようです。

このように、近親交配をくり返し続けると、最終的に血が途絶えてしまうというケースはかなり多いです。
そのため、ヘラクレスやタランドゥス、ニジイロクワガタなど、輸入が困難な種類は将来的に滅びてしまうのではないかと
かなり懸念されています。

そもそも昆虫は近親交配にとても強い

しかし、私の意見としては、クワガタやカブトムシをインブリードし続けても、累代障害が起きる可能性は非常に低いと思います。

なぜなら、昆虫は近親交配にとても強いからです。たとえば、作物を輸出する時に付着していた外国の昆虫が異常繁殖し、作物などが食害された例は枚挙にいとまがありません。甲だけ虫に絞っても、アメリカにおけるマメコガネや、日本における台湾カブト、北海道のカブトムシなどが挙げられます。

また、外来種の生命力は非常に強く、駆逐しようとしてもなかなか数を減らすことすら難しいです。つまり、これらの帰化生物において、累代障害なるものは全く見られていないのです。

実は、これらの害虫だけでなく、日本で人気のあるクワガタムシも、海外で外来種として大繁殖しているものもあります。

たとえば、パプアキンイロクワガタは、モルジブという国で大発生し、作物を食害するため、外来種として大きな問題になっています。ですが、パプアキンイロクワガタは近親交配にとても弱く、累代障害を起こしやすいとよく言われています。

しかし、パプキンが近親交配に弱いというのは絶対に間違いだと思います。なぜなら、作物を食い荒らすほど大発生するためには、近親相姦を相当くり返す必要があるからです。最初何匹のパプキンがモルジブに持ち込まれたのかはわかりません。

ですが、パプキンが最初にモルジブに持ち込まれたときは、日本で現在飼育されているパプキンの数よりもずっと数が少なかったはずです。

外国の環境に適応して大発生するほど強靭な生命力を持っているのに、近親交配を重ねた程度で血が途絶えるわけがありませんね。

スポンサーリンク

また、離島産のクワガタ(タカラヒラタやオキノエラブノコギリなど)は、もともと幼虫が入った朽木が海に漂流し、浜辺に打ち上げられたものが定着したのだそうです。これらの種類が定着するまでに、相当近親交配が行われたことは想像するまでもありませんね。

このように、昆虫とは、オスとメスが2頭いれば、繁殖し続け、生息圏を広めていくことができる生き物なのです。

ですから、クワガタを何十年も累代飼育したところで、近親交配の弊害によって血が途絶えることなど、絶対にありえないのです。

累代障害は単なる管理ミス?

では、累代を重ねると奇形が多発したり、卵を産まなくなる原因はなんでしょうか?
まず思いつくのが、単なる管理ミスです。たとえばヘラクレスは成熟させるのに時間がかかるため、しばらくは寝かしておく必要があります。

また、交尾がちゃんと成功していないと、卵を産んでも無精卵ばかりになることもあるようです。

ヘラクレスは成虫になるまでに一年半から2年かかるため、飼育管理が雑になりやすく、ミスすることも多くなってくると思われます。

他の虫でも同じことがいえます。パプキンやニジイロが卵を産まないのは、産卵セットの組み方を間違えている場合がほとんどです。

羽化不全が多発するのも高温で菌床が劣化したり、そもそも大型のオスはうまく羽化できないことが多く、死亡率もかなり上がります。

このように、なんでも近親交配のせいにするのではなく、飼育環境を見直してみるのも大事かもしれませんね。

累代そのものではなく、「血の固定」が原因か

とはいっても、やはり遺伝子が原因で障害を起こすことはあります。
これは、近親交配そのものが原因ではなく、「血の固定」が原因です。

兄弟同士で交配すると、親の形質をより受け継ぎやすくなります。
これを利用して、大型個体が生まれやすい大型血統や、美形の個体が生まれやすい
美形血統などが作られています。

だんだん近親交配を重ねていくうち、血統が持つ特徴は固定化されていきます。
つまり、生まれてくる子供たちはほとんどが大型化し、形もだんだん似通ってくるのです。

しかし、子供に受け継がれるのは、大きさや形の美しさなど、いい部分だけではありません。
当然、悪い部分も受け継がれやすくなります。

もし、形は大きくても、産卵数の少ないメスを親に選ぶと、当然子供たちもその特徴を受け継いでしまいます。兄弟同士で累代し続けることにより、悪い部分も固定化され、だんだんと程度が増してきます。

累代を重ねて卵の数が減ったり、奇形が多発するのは、近親交配が原因というより、親虫選びが原因でしょう。

一方、モルジブのパプキンのような帰化生物の場合は違います。遺伝子的に欠陥のある虚弱な個体は、自然淘汰されるため、近親交配しても血が途絶えなかったのだと考えられます。

このように、大きさや形にこだわるのではなく、単に健康な個体ばかり厳選していれば、血統が途絶えることはないのではないかと思います。

たとえば、産卵数が多い血統や、羽化不全が少ない血統同士を交配していれば、丈夫な成虫ばかりが生まれるようになっているはずです。

しかし、大きさや形にこだわるあまり、健康さという、最も重要な指標をおろそかにしてしまったばかりに、血が途絶えるという最悪の結果を迎えてしまったのではないでしょうか。

健康な血統を作ろう!

見た目や大きさを優先して、親虫を選んでいると、最終的に血が途絶える恐れがあります。

現に、累代障害が多発しているヘラクレスは、極太血統など、大きさや形優先で交配が行われています。また、パプキンやニジイロも、珍しいカラーを固定するため、親虫の厳選が行われています。

やはり、累代障害が多く見つかる種類は、見た目のみを重視した、かなり不自然な交配が行われているようです。

このような事態が起こるのは、やはり大きさや見た目重視のインブリードを行っているからでしょう。ですから、大きさだけでなく、なるべく健康さも考えて種親選びを行った方がよいと思われます。

たとえば、産卵数の多いメスの子供を優先して使うようにしたり、羽化不全を起こした成虫から子供を取らないようにするなどです。

ただ、一番手っ取り早いのはアウトブリードです。血がつながっていない個体を掛け合わせると、あまり悪い形質を受け継がないと言われています(良い形質も受け継ぎにくくなりますが)

しかし、何度も繰り返しますが、ヘラクレスなどの種類は今後、新しい血を入れることがほぼ不可能です。これらの種類はアウトブリードにも限界があるため、見た目重視の交配を繰り返すと、本当に血が途絶えてしまう可能性は十分にあり得るのです。

作者:青梅コウ

このブログの監修者

木林 充尚

1980年静岡県生まれ。浜松医科大学卒業後、美容整形外科を中心に、様々な医療現場を渡り歩く。医師時代に培った経験を活かし、医療脱毛、育毛、ダイエット、スキンケアなどの記事監修を手掛ける。現日本医療脱毛安全医科学会理事、発毛先端医療研究会副会長、日本肥満健康医学会名誉会員など。様々な分野で日々研鑽を欠かさない姿は医師の鑑そのものである。



スポンサーリンク
SNSフォローボタン

フォローする

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする